2016年センター国語 古文全訳

 男は「これまでだなあ。」と思っている時に、一人の鬼が走ってきて、男を捕らえ、連れ上げた。鬼たちがいうには、「この男は、重い罪があるはずのものでもない。許してやれ。」と言って、鬼が四五人ほどで、男に唾を吐きかけながらみな通り過ぎてしまった。
 その後、男は殺されなくなったことを喜んで、気分が悪く頭も痛かったが、我慢して、「早く家に行って、先ほどのことを妻に話そう。」と思って、急ぎ行き家に入ると、妻も子もみな男を見ても、何も言いかけない。また、男は話しかけたが、妻子は返事もしない。そこで、男は「驚きあきれたことだ。」と思って近くに寄ったが、そばに人がいても、誰かいるとは思わっていない。その時に、男が悟ったことは「なんと、鬼たちが自分に唾を吐きかけたことによって、自分の体がかくれてしまったのだなあ。」と思うと、悲しいことこの上ない。自分は人を見ることは前と同じである。また、人が言うことも差し支えなく聞ける。他人は自分の姿が見えず、声をも聞けない。だから、人が置いてあるものを取って食べても、人はこの事を気付かない。このようにして夜も明けると、妻子は自分のことを「昨夜、人に殺されてしまったようだ。」と言って、嘆き合っていることはこの上ない。
 それから数日経ったが、どうしようもない。そこで、男は六角堂に参詣して籠もり、「観音様、私をお助けてください。長年頼りに申し上げ、参詣しましたその御利益として、元の通りに私の姿を現してください。」と祈って、籠もっていた人の食べ物や寄進された米などを取って食べていたが、側にいる人は知ることがない。こうして十四日ほどにもなったころ、夜寝ていると、暁方の夢に、御帳のあたりに尊げな僧が出てきて、男の側に立ち、男に告げておっしゃることには、「お前はすぐに、朝ここから出て行き、最初に会った者が言うようなことに従いなさい。」と。このように夢を見るうちに、夢は覚めた。
 夜が明けたので出て行くと、門の側に牛飼童でとても恐ろしい感じの者が、大きい牛を引いているのに出会った。牛飼童が男を見て言うには、「さあ、そこのあなた、私の供として。」と。男はこれを聞くと、「自分の姿は現れたのだなあ。」と思うと、嬉しくて、喜びながら夢をあてにして童の共として行くと、西の方に十町ほど行って、大きな棟門がある。門は閉じて開かないので、牛飼童は、牛を門につないで、扉の隙間で、人が通ることができないようなところから入るといって、男を引いて、「お前も一緒に入れ」というので、男は「どうしてこんな隙間から入れるだろうか。」と言うと、童は「いいから入れ。」と言って、男の手を引いて入ったので、男も一緒に入った。見てみると、家の中は広くて、人はとても多い。
 童が男を連れて板敷きに上がって、中にどんどん入っていくが、「どうして」と言う人はまったくいない。遠く奥の方に入って見ると、姫君が病をわずらい横になっている。足元と枕元に女房達が並んで座っていて、姫君を看病している。童は男をそこに連れていき、小さな槌を持たせて、この病の姫君の側に座らせ、頭を打たせ腰を打たせた。その時、姫君は頭を起こして、病に非常に苦しんでいる。そうであるので、姫君の父母は「この病は、もうおしまいであるような。」と言って泣き合っている。男が見ると、経を唱え、また高貴な修験僧を招くように人を遣わしているようだ。しばらくあって、修験僧がやってきた。病人の近くに座り、般若心経を読んで祈ると、この男は「尊いことこの上ない。身の毛がよだち、なんとなく寒いようだ。」と思われる。
 そうしていると、この牛飼童がこの僧を見るとすぐに、ひたすら逃げ出し、外へ行ってしまった。僧は不動明王の火界の呪を読んで、病人を加持するときに、男の着ている服に火がついた。ひどく燃えるので、男は声をあげて叫ぶ。そうすると、男は姿を現した。その時、家の人や姫君の父母をはじめとして女房たちがみると、ひどく卑しげである男が病人である姫君の側に座っている。おどろいて、すぐに男を捕らえてひっばりだした。「これはどういうことだ。」と尋ねるので、男は事の様子をありのままに最初から述べる。人はみなこれを聞いて、不思議なことだと思う。こうしている間に、男の姿が現れると、病人はぬぐい去ったように平癒した。そこで、一家が非常に喜び合うことこの上ない。
 その時に、修験僧がいうには、「この男は罪があるはずのものでもない。六角堂の観音様の御利益をこうむった者である。だから、早くに許されるのがよい。」と言ったので、追い出して逃がしてやった。そこで、男は家に帰って、事の様子を語ると、妻は不思議なことだと思いながらも喜んだ。
 あの牛飼童は神の使いであったのだった。だれかの話にしたがって、この姫君に取り憑き、悩ましたのだった。
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