物理公式 「熱量」の話

熱量Q=質量m×比熱c×温度差⊿T
M:その時、僕らは寒い街を二人で散歩していた。ふと気が付くと、僕の冷たい右手は、彼女のあたたかく柔らかい右手を、そっと握りしめていた。
T:なんやねん。気色わるぅ。
M:小説ですよ。村上秋樹っていうペンネームでね。
T:あほか。だいたい、散歩しながら、右手で右手を握れるかぁ? どんなアクロバチック体位の散歩やねん。
M:! ・・・その彼女のあたたかさが僕の心に降りしきる雪を融かし・・・
T:もう、ええっちゅうねん。で、何の話や?
M:「熱量」です。Wikiってみましょうか? 「熱量とは、物体間を伝わる熱や、燃料や食品の持つ熱を、比較したり数値で測ったりできるもの(=量)として捉えたもの」です。
T:「物体間を伝わる熱」だから、僕の冷たい右手と、彼女のあたたかい右手っちゅうことなんやな?
M:そうそう。そこで問題。二人が手を握りしめた後、僕の右手の温度と彼女の右手の温度は、どうなったでしょうか?
T:そりゃ、いつか一緒の温度になるやろ。
M:正解は、僕の心に降りしきる雪・・・
T:もう、ええっちゅうねん。
M:そうそう。同じ温度になる。でも、なぜ同じ温度になるんだろう?
T:ん? ・・・なんでって、そうなるやんけ。
M:そもそも、温度が上がるということは、熱量を吸収したから。そして温度が下がるということは、熱量を放出したから。
T:ほな、僕の冷たい右手は彼女のあたたかい手から熱量を吸収し、そして彼女のあたたかい手は僕の冷たい右手に熱量を放出した、そうゆうことか?
M:そうそう。その熱量の放出と熱量の吸収は、二つの物体の温度差がなくなるまで、この状態を熱平衡というんだけれど、そこまで続くんだ。
T:ほう。
M:では、熱量の放出量と熱量の吸収量の関係は?
T:そりゃ、ギブアンドテイクやろ。等しいはずや。
M:そうだね。ギブアンドテイクはともかくとして、高温の物体と低温の物体を接触させたとき、熱が外部に逃げなければ、放出する熱量と、吸収する熱量は等しく、全体としての熱量の増減はない。これが熱量保存則だ。
T:ほな、熱量って、どう測るんや?
M:熱量Q[J]=質量m[g]×比熱c[J/gK]×温度差⊿T[K]なんだ。
T:熱量の単位はジュールっちゅうことは仕事やエネルギーと同じなん?
M:そう。たとえば、斜面上を物体が滑る。摩擦力で止まる。運動エネルギーが摩擦力のする負の仕事によって0になったから止まるんだけど、その摩擦力のする負の仕事の分のエネルギーはどこへ行くんだろう?
T:あぁ、それが摩擦が起きる時に生じる熱になるんか!
M:そうそう。だから、エネルギーも仕事も熱量もお互いに変換可能で同じ単位だ。
T:質量の単位はグラムやね。
M:一般には力学ではキログラムが標準単位なんで要注意だ。
T:温度に付いている三角は何やねん?
M:あれはデルタと読んで、「差」を示す記号なんだよ。⊿Tで温度差を示すんだ。
T:温度の単位[K]って?
M:ケルビンで絶対温度のこと。摂氏-273[℃]が絶対温度0[K]で、その後の温度幅は等しいから、摂氏27[℃]が絶対温度300[K]になる。
T:ほな、温度差だけで考えれば、摂氏でも絶対温度ケルビンでも同じなんやね?
M:そうそう。温度差だけ考える時には、摂氏とかケルビンとかあまり気にしなくていいんだ。
T:ん~、なんとなくわかって来たな。つまり、あたたかいものと冷たいものを一緒にすると、同じ熱量の分だけ放出と吸収があって、結果同じ温度になると。
M:そうそう、それで、僕の心に降りしきる・・・
T:もぅええわ。

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時習館ゼミナール/高等部
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