古文スキルアップ 女性にもてるコツ?(・∀・) 和泉式部日記より

(「和泉式部日記」より 五月雨が降り続き、物思いに沈む女のもとに宮[男]より便りがある。)
宮より、「雨のつれづれは、いかに」とて、
  おほかたにさみだるるとや思ふらむ君恋ひわたる今日のながめを
とあれば、折を過ぐし給はぬを、をかしと思ふ。
 降り続く五月雨の中、女はすることもないまま、自分の行く末や、男との中などを取りとめもなく考え、物思いに沈んでいく。男は、そんな沈み込む女の胸中を思いやりすぐさま便りを送る。
ごく普通の五月雨が降っていると貴方はお思いでしょうか。でもそうではないのですよ。この雨は、貴方を恋い慕い、物思いにふける時に流した涙が、この長雨になっているのです。
と男の便りに書いてある。女は、さすがに私がものさびしく感じる時機をはずさず、すぐに私を気遣う便りを下さるとはうれしいものと思った。
 まずは何と言っても、女が物思いに沈むその時を見逃さず、すぐさま気遣う手紙を送る、男の行動の素早さが素晴らしい♪ やっぱり、もてるコツは、何と言っても、素早くマメな行動力です。女の子が落ち込んでたり、困ってたりしてたら、速攻「大丈夫ですかぁ~」と声をかける、あるいはメールする、それが恋愛の第一歩ですな。
 和歌は「五月雨」を「私が流す涙」に例えています。大袈裟ですね。涙が雨ほど流れたら不便で仕方ありません。まぁ古文では「雨」が出てくると必ずそれは「涙」を示す比喩として使われますから、覚えておきましょう! ちなみに『ながめ』が「眺め(=物思いにふける)」と「長雨」の掛詞になっていますネ。
  

 

あはれなる折しもと思ひて、
  しのぶらむものとも知らでおのがただ身を知る雨と思ひけるかな
と書きて、
 女は、ちょうどしみじみと物思いに沈んでいた折に、わざわざ私に便りを下さったのだなとうれしく思って、
私を恋い慕って流して下さった貴方の涙とも知らずに、ただただわが身の悲しさからこぼす涙が五月雨となったとばかり思っていました。
と和歌を書いて、
 さて、男から便りをもらった女はやっぱりうれしく思っていますね。それで、この雨は、私を恋い慕う貴方が流す涙なのね♪ と、恋心満開でテンション上がりまくりになるところです。ところがね、ところがです。ここで、ルンルン気分全開で調子に乗っているのは、どうも今ひとつカッコ悪い。「あいつ浮かれた女だな」とか見られたらイヤでしょ。そこで、貴方が心配してくれるのはうれしいけれど、まだまだ私は悩んでいるのよ、ってフリをするわけです。
  

 

紙の一重をひき返して、
  ふれば世のいとど憂さのみ知らるるに今日のながめに水まさらなむ
待ちとる岸やと聞えたるを御覧じて、
 女はさらにその紙の一枚を裏返しにして、
  降り続く雨のように、この世間で生き続け時を過ごすうちに、世の中のつらさばかりがたいそう思い知られますので、物思いしながら見る今日の長雨に、川の水が増え、私をこの世間から流してしまって欲しい。
 水で流された人を待ち取ってくれる岸のように、貴方は私をこの辛さから救い上げてくれるのでしょうか。あるいは、仏教の彼岸を頼りとした方がいいのでしょうか。と女が申し上げた便りを読み、
 はい、こういう和歌もらったらどういう返事書きますか? せっかく私はあなたを恋い慕い涙を流していますよとか言っているのに、世の中がツラいってどういうこと? ひょっとして私があなたを恋い慕うのは迷惑ですか?? などと返事書いちゃダメですよ。さっきも言いましたが、これはポーズです。浮かれた女に見られたくないから、すこしだけ悩んでいる風なフリしているだけです。さらに、私まだ悩んでいるんで、もっともっと私に優しくしなきゃダメよ! って甘えているわけです。うん、確かにちょっとウザい気がする。でもですね、ここはグッとこらえて、ひたすら優しい言葉をかけるのがもてるコツですから!
和歌では『ふる』が「降る」と「経る」と、『ながめ』が「眺め(=物思いにふける)」と「長雨」の掛詞になっています。「なむ」は未然形接続ですから願望の終助詞で「~して欲しい」ですね。
  

 

たち返り、
  なにせむに身をさへ捨てむと思ふらむあめのしたには君のみやふる
誰も憂き世をやとあり。
 男はすぐに女に返事を返す。
  どうして、ご自分の身までも川の流れに捨て、出家などをお考えになるのでしょうか。天の下に降る雨は貴方のもとにばかり降るのではありませんし、貴方だけがつらい時を過ごしているわけでもありませんよ。
誰もがつらいこの世ですから、と男の返事には書いてある。
 これも、すぐに返事しているのが、この男の素晴らしさですね。そしてなんといっても、女が悩んでいる風なフリして甘えているだけということを、ちゃんと見抜いています。すばらしい。それで、川に身を投げるように自分自身を捨ててはいけませんよ、ツラいのは貴方だけではないんですからねと、あくまでも優しく、マイルドに語りかけています。
そのうえ、誰もがツラいんですよ、僕だって貴方と逢えない日々をツラく思っているんですよ、こんなにツラいほど貴方を恋い慕っているんですからと、さりげなく猛アピールしている所が、ただ者ではありませんね、賢いです。
 和歌ですが、『あめ』が「天」と「雨」と、『ふる』が「降る」と「経る」の掛詞になっています。
 
 
 
 ということで、相手が何を考えて何を望んでいるのかをとっさに理解し、行動に移す。モテる男には、明晰な頭脳と素早い行動力が必要なんですね。
 さぁ、皆さんもがんばりましょう!!

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時習館ゼミナール/高等部
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